顧問・呼吸器科 倉澤 卓也 医師 学研都市病院

長引く咳を軽視しないで!

今年1月、学研都市病院に着任した倉澤卓也医師は、国立病院機構南京都病院に20年近く勤務し、結核治療の最前線に立ち続けるエキスパートです。当院呼吸器科では、肺がんや咳喘息、非結核性の抗酸菌症、気管支や肺の感染症など、あらゆる呼吸器疾患の診断治療に取り組んでいます。


呼吸器科では、どのような病気が多くみられますか?

着任して半年になりますが、高齢者の誤嚥性肺炎(口腔内の雑菌が気管から肺に入って起きる肺炎)と、近年注目を集めている咳喘息(症状は咳だけだが普通の咳止め剤は効かず、喘息の治療が効く)が目につきますね。今年はインフルエンザも流行しました。一般的に呼吸器科で扱うのは、声帯から下の下気道、気管支、肺、横隔膜、胸膜(肺を包む膜)、縦隔 (じゅうかく=左右の肺にはさまれる場所)などに発生する病変です。かつて国民病とまでいわれた肺結核は減っていますが、1985年以降、非結核性の抗酸菌症(MAC症)が目立って増えています。これは中高年の女性に多いのが特徴で、結核に似ていますがまったくの別物。咳や痰が長引き苦しみますが、治療法は確立していません。肺がんや、喫煙などで起きる慢性閉塞性肺疾患も増加しています。多くの方は咳や痰を訴えて来院されますが、呼吸器疾患は、がんやアレルギー、感染症などが合併していることが多く、幅広い観点から診断をつけなければなりません。

「しつこい咳」といいますが、どのくらい続いたら病気が疑われますか?

咳が続く期間により、急性咳嗽(きゅうせいがいそう/3週間未満)、遷延性咳嗽(せんえんせいがいそう/3〜8週間)、慢性咳嗽(8週間以上)と名づけられています。咳を誘発する原因としては、肺炎、肺結核、急性気管支炎、インフルエンザウイルス感染、咳喘息、逆流性食道炎、高血圧の薬のACE阻害薬、アトピー性咳嗽などが挙げられます。急性咳嗽の原因の多くは風邪や肺炎などの感染症ですが、遷延性、慢性と咳の期間が長くなると、感染性疾患の頻度は低くなり、アレルギーやがんなど非感染性疾患の頻度が高くなります。肺がんには、扁平上皮がん、腺がん、小細胞がん、大細胞がんの4つのタイプがあり、小細胞がんがもっとも悪性度が高く危険です。また、女性の腺がんが急速に増えているのも要注意。高齢者の結核は症状が出にくいので、動きたがらないとか動作が緩慢とか、そのあたりにも注目してください。まず、喫煙、間接喫煙を避けることが重要です。

結核のエキスパートとしてのお考えをお聞かせください

結核は化学療法の発展で激減しましたが、まだ過去の病気とは言えません。1989年、国が結核流行の警告を出し、予防キャンペーンがおこなわれ、それ以降経年的に見ると減ってきています。しかし、問題は高齢者の患者が多くなったことです。高齢者の場合、咳・痰・微熱という結核の特徴的な症状があまり出ず、気づいたときには重症化していることが多いのです。また外国人の感染者が多くなったことも近年の特徴です。中でも東南アジアなどからの留学生や研修生の感染が増えています。実は、地球全体で見ると全人口63億人中、結核感染者は21億人。3人に1人の感染率で、感染者の10人に1人が発病。年間の発病者は850万人です。治療法は4種類の薬を組み合わせて使う方法が世界標準となっていますが、感染率の高い発展途上国では十分な検査や治療がおこなわれていません。予防は不可能ですからいかに早く発見するかがカギ。咳といえば、風邪と思い込まないで、結核を疑ってみることも大切です。


呼吸器内科に進んだきっかけは?

医学生の頃、内科医か精神科医を志していたのですが、学生運動で卒業が半年遅れてしまい、偶然、京都大学結核胸部疾患研究所付属病院に採用されたことから、呼吸器内科の臨床ひとすじにやってきました。呼吸器疾患の診断は、免疫とかアレルギー、感染症とか、あらゆる知識が必要で難しく、だからこそやりがいがあります。今後は経験を生かし、この地域の皆さんに貢献していきたいと思っています。呼吸器疾患は、とにかく早期発見・早期治療。自治体や会社でおこなわれている特定健診は必ず受けていただきたいですね。気になる症状があるときは、早めにご相談ください。

倉澤ドクター 倉澤ドクタープロフィール
昭和47年 9月 京都大学医学部卒業
昭和47年12月 京都大学結核胸部疾患研究所付属病院医員
(研修医)
昭和49年12月 (財)天理よろづ相談所病院呼吸器内科医員
昭和53年 6月 京都大学結核胸部疾患研究所内科学第一部門助手
昭和60年 3月 同上講師
昭和63年 4月 京都大学胸部疾患研究所感染・炎症学分野講師
昭和64年 1月 同上腫瘍学分野助教授
平成 4年 6月 国立療養所南京都病院副院長
平成10年 4月 同上院長
平成16年 4月 国立病院機構南京都病院院長
平成24年 1月 学研都市病院顧問